ゆずゆず温泉

これまでちょっと冬眠中でしたが、これからは春眠暁を覚えずで行きます(だめじゃん)。

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氷の姫と名を秘めた王子の物語(1)

☆まえがき
感想が早く書き終わったのでー。
前からあっためていたネタを投下してみようかな、とか。
私的解釈・トゥーランドットです。
来週になっちゃうと鈴木先生による吹雪&六花のトゥーランドットが展開されちゃうので。
それより前に! と思って。
資料もそろそろ図書館に返さないといけないし・・・。
長くなりそうなので、とりあえず(1)です。
・・・カテゴライズ「ブリザードアクセル」なのは、笑って許して下さい。

なお、音楽之友社「オペラ対訳ライブラリー・プッチーニ・トゥーランドット」(小瀬村幸子=訳)を参考にしました。
いくつかのセリフ(特に謎かけの部分)を同書籍から書き写させていただきました。

________________________________


 ――お前に呪いを与えなければなりません、我が皇女。

 闇に浮かんだその顔は、白く優美で、しかし青ざめていた。
 最初は母かと思った。
 私を産み落とすのと引き替えに命を落とした母かと。
 しかしすぐにそうではないことがわかった。
 この人は私の血に連なる女ではあるが――母ではない。

 ――お前に呪いを与えなければなりません。

 悲しい表情で、その人はもう一度繰り返した。

 我が魂のやすむところは今、血で穢されてしまいました。
 黒い力が目覚めます。
 私の中で眠っていた禍の力が、私の範を越えて――。

 一瞬声は遠ざかる。

 ――お前の中に、封じなければならない。

 捧げなさい。血を。
 お前を欲するものの血を。
 謎を与えるのです。三つの謎を。
 それがすなわち誓約。
 答えられぬ者の首を刎ねなさい。
 血潮を大地に注ぎなさい。
 そうすれば、しばし黒い力は眠りにつきましょう。
 国も、民も、命長らえましょう。

 そうしなければ。
 全ての者の上に滅びが。

   ∽∽∽∽∽

 そのまま私の意識は闇に呑まれた。

   ∽∽∽∽∽

 私は数人の男たちに攫われたのだった。
 しかし幸いなことに、たまたま通りかかった異国の王子が私を助けてくれた。
 賊たちを斬り捨て、私を宮殿へ送り届けてくれた。
 皇帝は喜び、褒美を取らそうと申し出た。
 彼の王子は答えた。
 ならばあの皇女を私に下さい。娶らせてください、と。
 眠りから覚めた私は事の次第を聞いた。

 言葉が勝手に口から紡ぎ出された。

 それでは、謎を。
 三つの謎を。
 答えられれば私はその男のものとなりましょう。
 ただし答えられなければ――首を刎ねます。

 かどわかし自体がその王子の計略だったことはすぐに暴かれた。
 放っておいても首を刎ねられる男に、私はなおも謎をかけた。
 命を懸けて必死に解き明かそうとも、男の思考は謎の裳裾にすら届かなかった。

 月の出とともに、男の首は刎ねられた。

 あるいは。
 あの浅はかな王子が口封じに賊を斬り捨てた場所が、我が先祖ロ・ウ・リンの眠る墓所でなかったならば。
 私の今はなかったかも知れぬ。
 だがそれは、思えども詮無きこと――。

   ∽∽∽∽∽

 今日も月が昇る。
 青白い、体のない頭。
 それを見れば嫌でも思い出す。
 あの日闇の中に浮かんで、私に呪いを与えたロ・ウ・リンの魂を。そのかんばせを。
 ――だが私は彼の人を憎むまい。
 これが――定めなのだから。

   ∽∽∽∽∽

 私が生まれたときに星が流れたらしい。
 占い師が尋ねられて曰く、
 ――皇女は類稀なる力をお持ちになって生まれた。きっと国を繁栄に導きましょう。
 ――大切にお育てしなければなりません。皇女が傷つけば土地も荒れ、皇女が病に伏せば災いが起こります。
 ――彼の伝説の皇女、ロ・ウ・リンと同じお力です。彼の姫が夷狄に穢され命落とされた後、我が国を襲った災い、いまだ我らを脅かす言い伝えの数々・・・繰り返してはなりません。

 その予言のおかげで恐らくは、私の命も永らえているのだ。
 それがなければとうに、気の触れた皇女として、よくて幽閉、悪ければ毒殺、闇から闇へ葬られていたことだろう。

 一度、宮殿の窓から落ちて足を捻ったことがあった。
 その年は凶作で、飢えて痩せこけた者が街の門の外に溢れた。
 それから、熱湯をかぶったことがあった。
 私は火傷ひとつ負わなかったが、一月後に城下に火事があって、多くの者が焼け出された。

 何より、侍女たちが責を負わされるので。

 私は自らの命を絶つことも、外見を傷めて求婚者を遠ざけることも、あきらめた。

   ∽∽∽∽∽

 今日の贄はペルシャの王子だった。
 まだ年若い。私よりも若い。少年だった。
 柔らかな優しい顔立ちをしていた。
 愛されて育ったのだろうと思った。
 だが、謎には答えられなかった。

 殺せ、殺せ、殺せ。
 そう叫んでいた民人たちは、王子の姿を認めて言葉を変えた。
 赦せ、赦せ、赦せ。
 どちらも同じ、残酷なざわめきだ。

 赦すことなど出来ない。
 謎は誓約。
 力の前に血を捧げる、その清めの為の儀式。
 赦すことなど出来ない。
 誓約を違えたなら――滅びるのは、我が民だ。

 哀れみは感じない。
 同情などしない。
 彼は自ら進んで誓約をしたのだ。
 そして、謎に答えられなかった。
 
 だから。

 少年が台にくくりつけられる。
 研ぎに研がれた刀を刑吏が振り上げる。
 月明かりを弾く、その刃。

 哀れみも――同情も――私は――
 感じない。










 ゆるして。







 小さな小さな声が聞こえた。

   ∽∽∽∽∽

 広場の一角が妙にざわめいていた。
 斬首の余韻に酔っているのだろうかと、ぼんやりと目を向けた。
 その目に飛び込んできた、一人の男の姿。
 周りの制止を振り切って、駆け上がる。
 銅鑼に飛びつく。
 
 血が、冷えた。

 その一瞬、音が聞こえなくなる。
 ざわめきも、喧騒も、制止の声も。
 静寂の中で、男がその手に撥を持って大きく振り上げた。
 夜の底を割るように、銅鑼の音声が響く。

「トゥーランドット!」
「トゥーランドット!」
「トゥーランドット!」

 彼は三度、私の名前を呼んだ。

<続く>
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昭和生まれ おうし座A型。
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