ゆずゆず温泉

これまでちょっと冬眠中でしたが、これからは春眠暁を覚えずで行きます(だめじゃん)。

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雪を待つ君の隣に(ブリザードアクセル・吹雪×六花)

☆まえがき、のようなもの
4巻の表紙に触発されて、初めて書いた吹雪×六花小説です。
原作では今9月ですが、それが12月になったときを想定してのお話。
その頃に話がどうなっているのか、そのときまで二人がペアを組んでいるのか、は謎ですが、「もしも」の話だと思って読んで頂ければ幸いです。
では「続き」からどうぞ。

 十二月下旬。
 冬至を過ぎたとはいえ、一年のうちで昼間が最も短い時季であることには違いがない。午後四時を過ぎると辺りはもう加速度的に暗くなっていく。

 少年と少女は並んで歩いていた。
 公園の中を突っ切る、リンクから寮への帰り道。
 通い慣れた道。
 定間隔で点る街灯が、舗道を弱々しく照らし出す。枯葉の表面がやけに白っぽく光っている。
 いつにも増して寒い公園には他に人影もなく、うら寂しさが余計に寒さを感じさせる。
 もっと中央通りに近い場所にある立派な木々には、イルミネーションが施されてそれらしくなっていたりもするのだが、どちらかというと裏道・抜け道のこちら側までは予算が回らないらしい。

「寒いね・・・」
「ああ」
 何度目かの同じやりとりをして、二人は黙り込む。
 無理に話さなくては間が持たない間柄ではないし、北風に頬が強ばって、うまく口が動かないと言うこともある。
 少年と少女は並んで歩いていた。
 もう幾度こうして一緒に歩いたことだろう――と数えかけて、意外に多くないことに少女は改めて気がついた。 この夏に彼と知り合い、「恋人以上の関係」になってから、まだ半年も経っていない。ようやく四分の一年を超えたところ。
 当然、一緒に過ごすクリスマスイブは今日が初めて、と言うことになる。

 とはいえ。
 少女はこっそりと溜息をついた。
 別に、何か特別なイベントが約束されている訳ではない。
 一応寮の夕食にはチキンとケーキが出ることになっていて、ちょっとしたパーティのようなものをやるかもしれない(やらないかもしれない)と仲間がしゃべっていた気もするが、それだけ。
 二人きりでどこかへ行こうとか、プレゼントを交換しようとか、そんな話は全く出ていない。
 まあそもそも大体、フィギュアスケートは今がシーズン真っ盛りであるからして。
 本来ならば自分たちは毎日練習に明け暮れているときで、救世主の誕生日も鶏たちの受難も知ったことではないはず。
 もちろん、遊びの予定など立てようもない。
 ないのだが。
 今日はたまたま。
 たまったま、練習が早く終わってしまったのだった。
 ――もう少し詳しく説明すると、「クリスマス特別営業」と銘打って普段より遅くまでリンクの一般開放をしている為に、いつも通りの練習が出来なくなったということで、要するに経営サイドの都合である。
「まあクリスマスくらいはゆっくりすればよいぞよ」
とコーチは言ってくれたが。

 正直、厳しい練習に身を置いていた方がマシだとさえ思えるのだ。
 こんな風に、交わされていない約束に思い悩んで、重い足を引きずるように歩いているよりは、二人で呼吸を合わせてぴかぴかの氷の上にいる方がずっといい。
 というか本当はそうしていたい。
 ずっとさっきから、ポケットの中でかじかんだ手を持て余している。
 ここがリンクの上ならば、手を繋ぐことになんの抵抗も覚えないのに。むしろそれが自然なのに。

 数歩先から少年が、ん? というようにこちらを振り返った。
 並んで歩いていたはずなのに、いつの間にか後れをとっていた。
「どうした? 腹減って動けないのか?」
 半分笑うその瞳がやけに綺麗に見えるのが癪で、駈け寄る気が失せた。
 少女は口を尖らせて、思いつくままに口にした。
「雪が降らないかなあと思って!」
「降らねえだろ」
 あっさりと少年は否定した。
「匂いがしないからな」

 なんで、どうして、たったそれだけの一言でこんなに、悔しくて腹が立って、悲しくなるかがわからない。

 多分一つには、「自分の中の彼への気持ち」と「彼の中の自分への気持ち」が異質なものであることが垣間見えた気がしたせい。
 それから、彼の今までの生活環境とか人生とかと、自分の今までのそれが全く重なってこなかったことを思い知らされた感じのせい。
 もう一つ言うと、「そんなことは今までわかりきっていて、それでも自分はただ純粋に彼のことを大切に思っていたと思っていたのに、結局のところこんなことくらいで揺らいじゃうんだ、なんなんだ私って」という自己嫌悪。
 むりやり言葉にすると、多分そういう感情。
 それが、ぐるぐるぐるぐるお腹の中に渦巻いて――なんだかひどく泣きたくなってしまった。

 うつむくと、足首にひっかかった落ち葉が目についた。
 暗いのに不思議と目立つそれを、振り払うように足を動かした。
 そのまま何度か片足をぶらぶらさせる。
 落ち葉は離れたと思うとまた張り付いてきて、周りに落ちてた別のまでひっついてきて、かさかさ、かさかさ、いらいらはつのるばかり。
「おーい」
「――どうせ」
「あん?」
「――雪の匂いなんて、わからないわよ・・・」
 こちとら東京生まれ東京育ち。たいてい年内に雪は降らず、大雪は年が明けてから、元・成人式の日と受験の日に降ったり降らなかったり。三月になる頃に降ることもあるけれど、季節外れのそれは大きくて重い牡丹雪で、泥まみれになってすぐに溶けてしまう。
 ホワイトクリスマスなんて、物語の中でしか知らない。――ああ、いつか北海道のホテルでパーティとかやったことあったっけ? 昔のことだから忘れちゃった。
 そう、それにあのとき、自分の傍らには彼はいなかったのだし――

 バランスは、あっけなく崩れた。
 振った足に勢いがつきすぎて、なんだか持ってかれる、と思ったときにはもう視界いっぱい暗い空。
「――っ!」
 倒れる転ぶひっくり返る!!
 思わず目をつぶって硬直する。
 ・・・が、臀部もしくは後頭部を襲うはずの痛みは訪れなかった。
 代わりに、包み込むような温かい感触。
「・・・っぶねぇ・・・」
 恐る恐る目を開けると、安堵の息をつく少年の、腕の中にいた。
 今度は違う意味で硬直してしまう。
「お前、ほんと、スケート以外のこととなるとドジだよなあ」
 少年の方はと言えば、緊張も照れも見せず、慣れていると言わんばかりにそっと少女を支えて、体勢を立て直してくれる。
 その上ですっと身をかがめたかと思うと、例の足もとの落ち葉を取り去ってしまった。
 ここまでされては、もう足を振り回すことも出来ない。ただ立ち尽くすしかない。
「ほれ」
 少年がすっと手を差し出した。
 一瞬意図がつかめず、きょとんとしてしまう。
 その間に少年は少女の手をつかんだ。
 そしてそのまま、上着のポケットに手を突っ込む。
 当然少女の右手も、少年の上着のポケットへ。
「え――」
 ポケットの中は、温かくて、熱いくらいで、少年の手の意外な骨っぽさと、腹のラインの筋肉の硬さが、心臓を蹴り上げてくる。
 つまりそれだけ、どきどきする。
 痛いくらいだ。
「うーわ、冷てえな、六花の手」
 言いながら、少年が歩き出してしまったので、少女もついて行かざるを得ない。
 表情が見えないのは不安だったが、見てしまう勇気もなくて、ほんの半歩遅れて歩く。
 うっかり靴の踵をふんずけてしまった。
「いてっ」
 やや大げさに少年が言う。
「あ、ごめ・・・」
 謝りかけて、口をへの字に引き結ぶ。
 いや、いやいやいや、自分は怒っているのだ。
 何だか何でだかもうわからないけど、怒っている。そのはず。だから謝る事なんてない。
「――あなたの歩き方が変に速いの。踏まれたくなかったらタイミング合わせて」
「・・・お前こそ、歩幅狭すぎ」
「コンパスが違うでしょうが」
「その分足開けばいいじゃねえか」
「女の子に何てこと言うのよ」
 言い合っていたら、不思議と気分が落ち着いた。
 いつかもこんな事があった気がする。
 そうあれは、ペアを組んで間もない頃――。
「とにかく、もっとオレの足の動きを見ろって」
「無ー理。この角度からじゃ見えません!」
 そこまで来ると、もう耐えきれなくなって、噴き出してしまった。
 同時に少年も笑い出す。
 ひとしきり笑うその間も、少女の手は少年の上着のポケットの中で暖められている。

「・・・さて。早く帰らねえと。山田さんのご馳走が冷めちまうぞ」
 促されて、少し寂しい気はしたけれど、今度はさっきほどには悲しくなかった。
 寄り添って、歩き出す。手を繋いだまま。
 その気になれば、歩幅を合わせるなんて二人にとっては簡単なことなのだ。
 自然に呼吸をするように、川の流れに乗るように、足が交互に進んでいく。
「なあ」
 少年が口を開く。
「晩飯のあと、時間あるか?」
「特に予定はないけど?」
「たまには『お客さん』としてリンクに行くっての、どう思う?」
「・・・面白いんじゃない?」

 それなら。
 その時に渡してしまおうか、プレゼントとして用意した手袋を。
 考えて、でもそうすると、こうして直に手を繋げなくなってしまうだろうかと思い直す。
 ゆらゆらと迷う思考も、少年の手の温かさで何だかどうでもよくなってくる。
「あれ・・・」
 少年が呟いて、目線を上げた気配。
 その先を追いかけると、街灯の明かりの中をちらちらと光るものが舞っている。
「勘が外れた。降ってきたなあ」
 人差し指で頬を掻く、その横顔が妙に可愛らしい。
「呼んだのかもしれないわ」
「あん?」
「私たちが。何しろ『雪』に関係ある名前が二人も揃ってるんだから。――ね、吹雪」
 名を呼んで、握る手にそっと力を込める。
「そんなもんかな。でもそしたら、これから先、毎年大変だぞ?」
 少年も、そっとそっと握りかえしてくる。
「オレは別に、お前一人がいれば十分なんだけどな。雪なんか降らなくたって」

 はずむ息が白い。
 別々の口から出た吐息が、空で混ざり合う。
 細かい雪は、その中から生まれて降り注ぐみたいに見えた。

                             <終>

________________________________
あとがきというかなんというか。

ブリザードアクセル4巻発売記念、です。
ブリザードアクセル(4)

前書きにも書きましたが、素敵すぎる4巻の表紙と、BUMP OF CHICKENの「スノースマイル」という曲のイメージから書きました。
というかほとんどそのまんまです。
歌詞はこちらうたまっぷでご覧下さい。ほんとにそのまんまです。

バレンタインも過ぎてそろそろ花粉も飛ぶという時季にクリスマスの話です。
初めて書いた吹雪×六花なので、口調とか性格とかいまいちつかめなくて困りました。
そんなシロモノですが、楽しんで頂けたら幸いです。
←こちらを押して頂けるととても嬉しいです。

BUMP OF CHICKEN のスノースマイルが収録されているCDは次の通りです。
よかったら(レンタルでもいいので)聴いてみて下さい。

(左)シングル (中)シングル 3曲目にスノースマイルringing version(右)アルバム 9曲目に収録
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いらっしゃいませ。
これからもどうぞよろしくお願いします。
  • posted by 百賀ゆずは
  • URL
  • 2006.02/23 00:39分
  • [Edit]

こんにちは~

コメントをどうぞhttp://jump.sagasu.in/goto/blog-ranking/で紹介されていたので、見に来ちゃいました。(^^)
  • posted by MISA
  • URL
  • 2006.02/22 16:13分
  • [Edit]

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Author:百賀ゆずは
昭和生まれ おうし座A型。
好きな食べ物は最後までとっとくタイプ。
別に好きじゃないけど長期休みの宿題は最終日までとっとくタイプ。

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