ゆずゆず温泉

これまでちょっと冬眠中でしたが、これからは春眠暁を覚えずで行きます(だめじゃん)。

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touch and feel (ブリザードアクセル・吹雪×六花)

☆この話について
4巻収録のProgram27「吹雪と一緒なら」の脳内補完SSです。
「続き」からどうぞ。

 涙はようやく止まったけれど、目の周りがまだ熱い。
 頭の奥が、体の芯が、ぼうっとしている。
 カーテンのない窓の向こうに、真円よりも僅かに欠けた月が見える。
 西に傾いて大きさを増したそれは、まばゆいくらいで。
 差し込む月の明かりに、自分の輪郭が溶けるような気がした。
 
 ビデオルームのドアに寄りかかり、六花はしばらく立ち尽くしていた。
 吹雪、と小さく呟いてみる。心の中で。
 部屋の中で、机に突っ伏して眠っている少年の名前。
 人一倍、どころでは済まない量の猛練習をこなして、それでもなお生き生きとしている。
 初めてのペアの練習で、ちょっとくらい、どころでは済まない足の蹴り合いをしてもへこたれない。
 それどころかこうして、パートナーとなった自分のことを研究してくれている。
 疲れているだろうに。
 居眠りしちゃうくらい、疲れているだろうに。
 寝言でさえ、六花のことを励ましてくれる。――当人にその気はないだろうけれど。

 知りたい、と思った。
 どうしてそんなにがんばれるのか。
 どうしてそんなに意志が強いのか。
 そして。
 どんな夢を見ているのか。

 その夢の隣に、私がいたりするのだろうか。

 ぞくり。
 熱いはずの体に、不思議な震えが走る。
 半袖から伸びた腕が小さく粟立つ。
 ・・・夏とはいえ、夜明け前は気温が下がる。

 ――あのままじゃ、風邪引いちゃうよね。

 少しためらいを覚えたけれど、ドアを開けてもう一度ビデオルームの中へ戻る。
 吹雪はちょっとだけ姿勢を変えて、でもやっぱり熟睡していた。
 深い寝息。
 おあつらえむきに、彼の傍らに彼の上着がある。
 拾って、そっと、肩にかける。
 誰かに対してそんなことをするのは生まれて初めてで、起こしたりしないだろうかとか見つかったらなんて言い訳しようかとか、どきどきして手が震えた。

 けれど彼は身じろぎもせず。
 深い寝息は相変わらず。

 六花は、ほっとしたような拍子抜けのような息を吐いた。
 電気を消して、部屋を出た。

 自室に戻る。
 相変わらずの汚い部屋。
 脱ぎ散らかされた洋服に、やっぱり月の光が注いでいる。
 ふと思いついた。
 灯りをつけぬまま、タンスの前へ向かう。
 練習用の衣裳の入った段を開けた。
 ――確か、この辺にしまった、はず・・・。
 幸い、目当てのものはすぐに見つかった。
 バッグに詰め込む。今やらないと迷い心が出てしまいそうなので、その辺はもう素早く。
 ちょっとどきどきするのを押さえ込むように、うつぶせにベッドに倒れ込む。

 吹雪のことを知りたいと思う。
 だから、これが今、とりあえず私に出来ること・・・。

 翌日。
 リンクで会った吹雪は、六花の格好を見て、ん? という顔をした。
 ・・・した、かもしれない。
 少し気恥ずかしくて、まじまじと反応を観察するゆとりなんてなかったので、よくわからないというのが正直なところ。
 選んだのはセパレートの練習着。
 タンクトップの裾は短く、腹部は空気に晒されている。
 もちろん肩や腕の露出も大きく、リンクの寒さがほんの少し肌を刺した。
 でも、これが必要なことなのだ。
 小さくうなずいて、つるつるの氷の上を滑り出す。
 
 ジャンプの練習も取り入れようというコーチの言葉を途中で遮る。
 スイングロール、それだけを1週間。
 それでいい。それがいい。
 もうつまらないなんて言わない。
 心からパートナーのことを知りたいと思うから、基本をおろそかにはしたくない。
 心の底からそう思う。
 
 自分から手を差し出した。
 吹雪の手が、それをとってくれる。
 昨日よりもよくわかる、彼の手の温かさ。
 なんで昨日はわからなかったんだろう。
 ・・・きっと、こうして毎日毎日少しずつ、わかることは増えていくはず。

「いくぞ!」
「ええ!」
 昨日と同じやりとり。
 今日も吹雪はへこたれていない。
 私だって負けられない。
 ホールドの姿勢をとる。
 吹雪の手が腰に回る。
 肌に直に触れられて、反射的に身をよじらないようにするのは、ほんのちょっとだけ根性がいったけれど。

 ・・・大丈夫。
 うん、大丈夫。

 自分の思いつきが見当外れではなかったことが証明されて、嬉しくなる。
 吹雪の微妙な動き。それがよくわかる。
 押す。
 引き寄せる。
 掌からかかる圧力が、ほんの少しずつ変化する。
 厚いジャージ越しではわからなかったこと。
 六花のむき出しの肩や腕が、吹雪の胸や腕に沿って、筋肉の動きを伝えてくれる。
 密着した腰が、次の足の動きを予測させる。

 そして、吹雪の体のさばき方は、昨日よりずっと六花のそれに近づいていて。
 カーブの時に押し倒されるような感じもなく、クロスの足はひっかからず、一緒に曲げた膝は――変な表現だけど、ちゃんとしたレストランで座るときに給仕が押し出してくれる椅子みたい。

 やだ、どうしよう。
 知らず笑いがこみ上げてくる。
 どうしよう。
 楽しい。
 自分で滑ってるはずなのに、勝手に思わぬ加速がつく感じ。
 目の前が開けて、景色の色まで変わっていく・・・。
 
 ――そういえば、吹雪も半袖のTシャツだ・・・。
 唐突に気がついて、思わず目線が吹雪の方へ動く。
 横目で見た吹雪の表情は、やっぱり少し笑って、楽しそうで・・・。
 ほんの少しだけれど、吹雪の心にまで触れられた気がして、嬉しかった。

 吹雪と一緒なら、できるはず。
 昨日の夜感じた言葉を、もう一度噛みしめる。
 一緒なら、きっと。 

<終>

________________________________

あとがき、のようなもの。

多分こう言う事じゃないかと思うのですよ。六花が2日目のペア練習に、ヘソ出しの衣裳で現れた理由は。
これに思い至ったときに、なんか六花って可愛いなーと思ったのでした。
でも氷上でヘソ出しは腹が冷えそうで心配。
・・・実は本番の衣裳と同じくストッキング生地みたいなのが張ってあるのだろうか。
・・・や、いや、それはやっぱりないよな・・・でないと困る(笑)。

昨日のサンデー感想で口走った「吹雪×六花週間」の1作目、のつもりです。
明日以降も続くかは不明ですが。


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*Comment

リンクはらせていただきましたっ。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
感想とかは、真面目というよりか、つい長くなってしまうのです(苦笑)。
そのくせ肝腎なポイントが抜けてたり。
でももえてる限り書き続けようと思います。
イラストほめて頂けて光栄です。
本当にありがとうございました。
  • posted by 百賀ゆずは
  • URL
  • 2006.03/14 08:21分
  • [Edit]

not subject

リンク全然OKです。
てかリンク有り難うございますの感謝の気持ちでいっぱいなので(ぁ
凄くサンデーの感想とか真面目に書いてて凄いです(;´Д`)
あと絵もお上手で…も、萌えっ!(オチツケ
これからもどうぞ宜しくお願いします!
  • posted by 霜月
  • URL
  • 2006.03/12 08:53分
  • [Edit]

not subject

いらっしゃいませっ。
ようこそおいで下さいました&読んで下さってありがとうございます。
や、やっぱり吹雪×六花は公式と思っていいんですよね?
私の拙い筆(と思いこみ)で少しでも萌えて頂けるならば、本望です!
リンクありがとうございます。
もしもよろしければこちらからもリンクさせて頂きたいのですが・・・。
また改めてご挨拶に伺いますね。
今後ともよろしくお願いいたします。
  • posted by 百賀ゆずは
  • URL
  • 2006.03/11 01:40分
  • [Edit]

not subject

どもども。ここでは初めましてB―PRESTの霜月です。
な、なんですか!この萌え小説はっ!?
六花ちゃんの健気さとかが伝わって来るじゃないですか。
吹雪×六花ちゃんは公式ですからね。なんか良い小説を読みました。
なんか挨拶っぽく無いコメントになってしまいましたがこれからも宜しくお願いします。
  • posted by 霜月
  • URL
  • 2006.03/10 20:57分
  • [Edit]

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Author:百賀ゆずは
昭和生まれ おうし座A型。
好きな食べ物は最後までとっとくタイプ。
別に好きじゃないけど長期休みの宿題は最終日までとっとくタイプ。

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